2012-05

○初めてお越しの方へ。
 「ブログ開設のごあいさつ」や「ブログ掲載の線路配置図のごあんない」を先にお読みいただくと、「だまされた!」と思うことを避けられるかもしれません。

○何年かぶりに自分のブログをIEで見てみたら、図がまともに表示されていなくて衝撃を受けました。普段Chromeしか使っていないため全く気が付きませんでした。当ブログをご覧になるときはChromeを使われた方がよいかもしれません。なお、他のブラウザーは使う機会がないので当ブログの表示にどのような問題があるのか全くわかりません。

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電車の偶数奇数

 線路配置には全く関係がありません。国鉄・JRの電車の偶数・奇数について自分で理解できた範囲のことをまとめてあります。

・偶数向き・奇数向きについては目で見て確認できるので、1位 2位 が付いているほうが後位になってでもいない限りは、間違いは少ないはずです。
・偶数設計・奇数設計については推測の部分が多いので、とんでもない間違いが含まれている可能性があります。
・用語としては“偶数設計”“奇数設計”“偶数向き”“奇数向き”でそれぞれが一まとまりのようです。以下、“偶数設計か奇数設計”“偶数設計と奇数設計”“偶数向きか奇数向き”“偶数向きと奇数向き”のような意味で略して使うときは「設計」「向き」のように記述するようにしています。なるべく。
・車体の向きが変わる(運転室が東京方から神戸方になったり、その逆だったりする)場合は「方転」、車体の向きが変わらないのに前位・後位が入れ替わる( 1位 2位 の表記の位置が車体の反対側に移動する)場合は「逆転」と記述しています。


※文中、わかりやすくするつもりで入れている図に関してのご注意。

・車輌が東海道本線上/東海道新幹線上にあるものとして「東京寄り」「神戸寄り」「新大阪寄り」「下り方」「上り方」「山側」「海側」と記述しています。
・すべて車体を上から見た状態になっています。
・設計の違いを表すために引き通しの「側」を図示していますが、「渡り」については基本的に省略しています。

 また、このように色と方向で「設計」と「向き」を区別しています。
凡例

(多少なりともわかりやすくならないものかと、文章や図の微修正は随時。)

0.発端

 とあるサイト(ブックマークが吹っ飛んだあとで検索をかけなおすと見つからなくなってしまっており残念)に、国鉄の規程だったら3位側になるところに 2位 が付いている写真が掲載されていて、
クハ221の便所が2位側に設置されている
ことに改めて気づかせてもらったことから始まります。

・興味がない人にとってはどうでも良いことですが、人によっては驚天動地・・・かもしれない写真。
(01) 発端
 端的に言うとこちらが「前」だということです。

 ちなみに、撮影済みの中では最新系列の225系もこの通り。
・クモハ224の後位。
(02) 225

・クモハ224の前位。
(03) 225

 ここまででわかる人には全部わかってしまったことでしょう。わからない人は残りを読んでもわからないかもしれません。なにしろ書いている本人があまりよくわかっていません。以下、わかりにくい文章と図と写真で、電車の前後から始めてぽつぽつと。

A.前位・後位と位置呼称(1位・2位・・・)の決め方

 国鉄の車輌全般の位置呼称に関する通達(鉄道公報第3215号/昭和35年6月10日金曜日/総裁達第319号)のうち、電車の偶数・奇数に関係しそうな前位の規程は以下の通りです。 (※mamezoo.com/pc/PC-CLUB/LOG/LOG-E53.htmlを参照して抜き出し。)

 新幹線電車は一部この規程には当てはまらないのですが、これより新しいものは見つけられませんでした。

(1)先頭車の場合、
・片運転室車は運転室側。
・両運転室車は主要運転操作機器のある運転室側。
・回送用運転室は無関係。

図A1.運転室と前位
前位・後位


(2)中間車は制御回路の引き通しを左に見る方向。

図A2.制御引き通しと前位
前位・後位

 後述していますが、この前位と引き通しの関係は「奇数設計」そのものになります。


 また、同じ通達にある位置呼称の決め方は以下の通りです。
(1)前から1位・2位・・・。
(2)左右に並列するものは前位の右を1位、前位の左を2位、以下後位に続ける。


図A3.位置呼称
位置呼称

 橙色の矢印が車体の位置呼称です。水色の矢印は片開き4扉車の場合の扉の位置呼称の例になります。両開き4扉車の場合は同様に1位から16位まで並ぶことになります。

 位置を示すために丸囲みの数字が必要な個所につけられています。一番わかりやすいのは乗降扉の内側でしょうか。車体の場合は1位の車体側面に 1位 、2位の車体側面に 2位 が表記されていて、どういうわけか3位と4位には表記がありません。在来線電車やディーゼル車では車体側面に表記されていますが、客車・新幹線電車のほとんどは車体妻面に表記されているようですし、貨車は(全て?)側面にあるようです。


 電気機関車・ディーゼル機関車・ハイブリッド機関車では前位側を第1エンド、後位側を第2エンドと呼び、第1エンドの左右側面裾に 1エンド 、第2エンドの左右側面裾に 2エンド が付いています。ジャンパ連結器やホースの位置を示すときに1位−4位であらわす方法と、1R(第1エンド右側=1位)1L(第1エンド左側=2位)2R(第2エンド右側=3位)2L(第2エンド左側=4位)であらわす方法があるようです。

B.電車の向きと偶数向き・奇数向きの対応

 そもそもは京浜線の電車の連結運転に際して横浜寄りに0からの偶数番号車、東京寄りに1からの奇数番号車を連結したことから、偶数・奇数と電車の向きが最初に関連付けられることになり、これを拡張して在来線では東海道本線上で上り方を奇数方向、下り方を偶数方向とすることになったそうです。

図B1.偶数向き・奇数向き
偶数向き・奇数向き

C.偶数設計・奇数設計の意味

 上記の通り連結される位置によって車体の向きは反対になりますが、検修の便を考慮して編成としては山側/海側の機器をそろえるようにしたそうです。そのため同一形式の電車でも車体の向き床下機器の配置の向きによって2つの形態が生まれ、それぞれを偶数設計/奇数設計と呼ぶことになったそうです。図にしても分かりにくいかもしれませんが、とりあえずはこういうことのようです。

図C1.偶数設計・奇数設計(関東)
偶数設計・奇数設計

 上の図は旧型国電の関東の場合で、関西では偶数設計の床下機器配置の解釈が異なって下の図のようになっていたそうです。

図C2.偶数設計・奇数設計(関西)
偶数設計・奇数設計

 のちに関東と関西で電車を融通するようになると、関東型に統一されたそうです(たしかに検修の便を考えれば関西型の発想が出てくるほうが不思議だと思います)。

 また、上記のように本来は電気関連の機器と空気関連の機器の搭載位置の違いから始まったものですが、今では制御引き通しの位置が

・「2−4位側」にあるものを奇数設計(この規程と合わせると中間車は全部奇数設計になります。)
・「1−3位側」にあるものを偶数設計

として区別するようです。

 この記事の冒頭の注意書きにも書いてありますが念のため、車体の上から見た図になっています。鉄道模型をやっていると車輌をひっくり返して床下機器を見るせいか、機器配置図を車体の下から見たもののように思ってしまいがちです。筆者だけではない・・・と信じたい。

※偶数設計の関東と関西の差異はTMS(不覚にも月号失念・・・)掲載の小林信夫師匠の記事の記憶。当然ながら元の記事中には図C1/C2とは比較するも畏れ多い、わかりやすいイラストが掲載されていました。早く「小林信夫全集」が出ることを期待。

D.「設計」と「向き」の組み合わせ

 前節の段階では奇数設計車は奇数向き、偶数設計車は偶数向きとなるはずですが、実際には順当に組み合わせ通りに

・奇数設計で奇数向き
・奇数設計で偶数向き
・偶数設計で奇数向き
・偶数設計で偶数向き

の4種類が存在し、車輌の管理上の不便があったそうです。組み合わせを下に図示します。当然ながら両渡りでない車輌は方転したときはジャンパ連結器の改造が必要ですが、そこまでは描いていません。

図D1.「設計」と「向き」の組み合わせと引き通しの位置
「設計」と「向き」・在来線

 前節の通り、偶数設計車ではさらに床下機器の並びの解釈の違いで形態のパターンがさらに増えるわけですから、旧型国電対象の現車の追跡はもちろん模型製作にも悩みが尽きないらしいです。そっち方面には手を出していないのでよくわかりませんが、考えるだけでめまいが・・・。

※B節/C節とD節のここまではJTB CANBOOK「旧型国電50年(1)」70ページを参照。この本自体はツッコミどころが満載のようですが・・・。

〇 〇 〇

 いわゆる新性能電車では(何かで80系も当てはまるようなことを読んだような読まないような・・・)先頭車を奇数設計に統一することになりました。先頭車の向きについてはジャンパ連結器を左右両側に設置(両渡りに)して、「偶数向き」・「奇数向き」どちらにも使用可能にしてあります。

図D2.先頭車・奇数設計で奇数向き/偶数向き共用
在来線 先頭車下り方・上り方共用


 電車の冷房化が進んでくるとジャンパ連結器の数が増えて設置場所が苦しくなったため、先頭車の方向を固定しジャンパ連結器を片渡りにしたものが出てきます。

図D3.先頭車・奇数設計で奇数向き/偶数向きそれぞれ方向固定
在来線 下り方先頭車・方転片渡り


 さらに、方向転換をしないのならば奇数設計にこだわる必要もないということなのか、旧型国電に先祖返りしたかのような偶数設計の先頭車も国鉄末期に現れます。

図D4.下り方先頭車・偶数設計(元の木阿弥・・・)
在来線 下り方先頭車・専用偶数設計


 改造で中間車の後位側に運転室を設置した車輌は(運転室側が前位になるため前位・後位が逆転し、それに伴い1−3位側・2−4位側も逆転するため)偶数設計になりますが、奇数向きに使われていることもあります。パターンがあるようで当てはまらないものもたくさんあり、複雑怪奇な全体を把握しようなどとは考えないほうが身のためかもしれません。

 なにせ、(先頭車化改造をしたわけでもなく元の奇数設計のままなのに)偶数向きに使用するクロハ481の車体に当初480を表記していた例があるほど国鉄内部でも混乱があったことが鉄道ファン1987年4月号の特集に記載されていたぐらいです。まさに歴史は繰り返す?。同じ記事には奇数向き固定の番台でもクハ188だったり、奇数向き専用に使用されているのにクハ480だったり、MG/CPを搭載したらクハ480からクハ481に改称されたり(しかも偶数向きで使用したり)していることも記載されています。



 図D4に当てはまる国鉄型電車の先頭車の写真です。

・東海道本線上で上り方先頭車。
(d1) 201

・運転室側が前位。
(d2) 201

・東海道本線上で下り方先頭車。
(d3) 201

・やっぱり、運転室側が前位。
(d4) 201

 とりあえず確実に言えることは国鉄時代の(両運車以外では)在来線電車は運転室があればそっちが前位であるということです。

「それだけかい!」という声が聞こえてきそうですが、新幹線では“それだけ”すら無くなります。

〇 〇 〇

 既述の通り運転室のない中間車については奇数設計しかありません。基本的に逆に向ける必要がないので奇数向き使用が多いのですが、編成を組む車輌の半分ほどを方転していた151系から、211系の2階建てグリーン車まで、編成に組み込む都合で先頭車と中間車を一まとめに偶数向きに連結することも、あるいは先頭車とは独立に中間車だけを偶数向きに連結することもあります。


図D5.運転開始当初の151系の編成。
151系こだま
 なんでも運用の単位が半編成ずつで、翌日の交検上りの半編成の向きとは反対に在区予備の半編成の向きを合わせるため、必要なら三角線で方転していたというようなことが鉄道ファン1978年3月号に書かれていました。

図D6.2階建てグリーン車組み込みでグリーン車を方転した211系の編成。
211系変則編成
 1輌だけの2階建てグリーン車の号車を図D7と合わせるとともに、車掌室と便所をグリーン車同士を連結している方に向けるためにややこしいことをしています。

図D7.2階建てグリーン車をそのままの向きで組み込んだ211系の編成。
211系正規編成

他にも食堂車の引き通しをひねって編成の前後でそれぞれ逆向き/Mc先頭方式でユニットごと方転/サロとサハシを1輌ずつ方転、といった例がありますが詳しくはわからないので図は割愛。

〇 〇 〇

 鉄道ファン1979年12月号の新幹線15年PART1を読んだ記憶では「0系は博多向きを奇数/編成全車が奇数設計・奇数向き使用/ 22型の運転室は後位側」というような記述がありました。

 つまり、新幹線では

・偶数向き・奇数向きの方向を在来線とは逆にされた
・在来線で4通りあった電車の「設計」と「向き」の組み合わせが1つに限定された
・前位・後位の規程から運転室の条件が除かれた

ようです。

図D8.運転室とは無関係に前位を決められた新幹線の編成
新幹線・編成全体 奇数設計 奇数向き使用

 実際の車輌で表記の位置を確認します。

・700系E編成の下り方先頭車。
(d11) 新幹線

・上の写真の矢印部分の拡大。
(d12) 新幹線
 運転室扉下に 1位 が見えます。

・同じく上り方先頭車。
(d13) 新幹線

・上の写真の矢印部分の拡大。
(d14) 新幹線
 こちらが前位だったならば同じように運転室扉下に 2位 が見えるはずですが、ありません。(障害物が多いですが、隠れているわけではありません。)

 では上り方先頭車のエンドの表記はどこかというと、

・C編成ですが、同じ700系の上り方先頭車。
(d15) 新幹線

・同じ車輌の連結面。
(d16) 新幹線
 中間車と同様、車体妻面のこんなところにあります。言うまでもないですが、こちらが「前位」です。

・(参考)客車のエンド表記の例。
(d17) 客車
(d18) 客車
 カニ24の前位側で、雨どいに邪魔されていますが、 1位 の表記が見えます。いわゆるジョイフルトレインの改造展望車以外の客車では車体妻面にエンド表記があるのが普通のようです。

・ちなみにN700系は全周幌のため下り方先頭車以外はエンドの表記を確認できません。
(d19) N700

 もっとも、新幹線の形式番号・車輌番号は後位側扉脇(扉が無ければ後位側車体側面裾)に表記する規程が一応あるそうなので、たいていの場合は前位・後位を迷うことはないと思います。写真(d13)にも後位扉脇に形式・車号があります。(中には前頭部の長さから車体の中央付近にあるものもあります。またJR東日本とJR九州は規程が変わったのか前位側に表記しているものもみられます。)


 下りが奇数向きになったこともさることながら、これまで運転室の位置が国鉄電車の前位・後位を決定する最優先の要素だったものが、新幹線ではそうではなくなったわけです。この件についての雑誌記事での記述は前掲の鉄道ファンで1度見た以外には見つかりませんでした。

 それどころか未だに724型や784型の解説で「運転室のない博多寄りを後位」とする誤った記述を見かけることもあります。それほど「運転室のあるほうが前位」という思い込みが強いのでしょう。

 それなら「運転室側が後位である」ことを知った時の衝撃はなおのこと大きいと思われるのですが、あまり広く発信されているようには思えないのが不思議です。


 大事なことなので大きく書いておきます。

東海道新幹線上で東京方(偶数方)の先頭車は運転室側が後位です。新幹線に「偶数向き使用」の電車はありません。

※北陸新幹線が金沢まで延長された時には変化があるかもしれません。JR東日本は高崎・東京方向が奇数向きです。JR西日本が山陽新幹線の向きに合わせると金沢方向が奇数向きになります。さてどうなることやら・・・。


 この規程からはあり得ないながら、念のため700系など電動車ユニットが逆転しているあたりを確認しましたが、制御引き通しの位置は編成全体で2−4位側にあるようなので、こちらも大きく書いておきます。

新幹線に「偶数設計」の電車はありません。

E.両運車の「設計」と「向き」

 ここまで触れていない両運転室の電車の「設計」と「向き」については国鉄時代の郵便・荷物電車に関して鉄道ファン1983年6月号の新車ラインナップの中のクモユ143の項目に言及がありました。(事業用の電車にも当てはまるはずだと思いますが、書かれていません。)

 それによると
・141系列以前(旧型も含むと思われるが不明確)は基本的に偶数設計、No1パンタ
・143系列(145系列以降も含むと思われるが不明確)は奇数設計、No2パンタ
と記されています。

 そして向きについては「逆向き」としか書かれていないため、正確なところはわかりませんが、「本線上での姿は向きもパンタの位置も床下機器の位置も変わらず―ただエンド表示が逆についている―」ということなので、
・141系列以前は偶数設計・偶数向き使用
・143系列は奇数設計・奇数向き使用
だと判断できます。

図E1.両運転室車の「設計」と「向き」
在来線 両運車 「設計」と「向き」

 東海道本線上で旅客列車に郵便車・荷物車を併結するときは下り方になり、偶数向きの運転室のほうをよく使うことになるので、141系列以前は偶数設計だったのかと想像しているのですが、143系列で変更した(変更せねばならなかった?)理由も含め真相は不明です。


F.JR西日本の電車の「設計」と「向き」

 やっと発端に戻りますが、改めて鉄道ファン1989年4月号の221系の新車ガイド(執筆者はJR西日本車両部車両課所属)を見ると、

(1)神戸寄りの先頭車クハ221の運転室側に 1位 2位 の表記がない写真
(2)全形式で山側が2−4位となっているとの記述
(3)全形式で電気機器を山側に装備しているとの記述

があります。

 つまり、221系は
・全車輌が「奇数設計」
・全車輌が東京寄りを前位とする「奇数向き使用」
ということになります。

 このことは(新幹線開業から20年余を経て)JR西日本だけはようやく在来線電車に(上りと下りは反対になっていますが)新幹線と同様の車輌の向きの考え方を取り入れたことを示しています。

図F1.JR西日本の奇数向き使用の編成
JR西日本 奇数向き使用

 実際の221系を順に見てゆきます。

・編成全体。
(f1) 221

・上の写真の上り方から、クモハ221の前位。
(f2) 221

・順に下り方へ。左がクモハ221の後位、右がモハ221の前位。
(f3) 221

・左がモハ221の後位、右がサハ221の前位。
(f4) 221

・左がサハ221の後位、右がクハ221の「前位」。
(f5) 221

・クハ221の「後位」。
(f6) 221
 こちらが前位側であれば当然あるはずの表記が矢印の位置にありません。

 雑誌掲載の写真や現物でとりあえず確認できる範囲では、JR西日本が開発した電車の系列に含まれる編成のエンド表記の位置は上の一連の写真と同様、同じ方向に揃っていました。確認しやすいだろうと思うので、いくつか中間に運転室が入った例を挙げておきます。

・207系の分割併合位置。
(f11) 207
 左がクモハ207の前位、右がクハ206の後位。

・223系と225系の併結。
(f12) 225
 左がクハ222の後位、右がクモハ225の前位。

・681系の分割併合位置。
(f13) 681
 左がクハ680の後位、右がクモハ681の前位。

 

 JR西日本でもディーゼル車の前位・後位は国鉄時代の考え方のままのようです。

・(参考)キハ189系の分割併合位置。
(f14) 気動車
 左がキハ189型1000番台、右がキハ189型0番台で、どちらも前位側です。

〇 〇 〇

 向きについては奇数向き使用が多いのですが、偶数向き使用のものもあります。グリーン車の位置を変えるために方転したものでは、681系試作車と281系が当てはまります。

 新製時から「奇数設計・偶数向き使用」となっているものに、しらさぎ用683系2000番台があります。米原での分割併合の都合からサンダーバードやはくたかとは逆向きにグリーン車を連結されていて、他の683系とは前位・後位が方転されています。ちなみにサンダーバードのグリーン車は奇数設計・奇数向き使用のクロ683で偶数方編成端に連結、しらさぎのグリーン車は奇数設計・偶数向き使用のクロ682で奇数方編成端に連結されています。

図F2.JR西日本の偶数向き使用の編成
JR西日本 偶数向き使用

・下り方のクハ281の前位。
(f21) 281


・対して上り方のクロ280の前位。
(f22) 281

・クロ280の後位。
(f23) 281


・下り方のクロ681試作車の運転室側。
(f24) 681
 ぶれていて見にくいですが、矢印の位置にエンド表記があるので、こちらが前位となっています。

・下り方のクロ681量産車の運転室側。
(f25) 681
 エンド表記がないので、試作車と異なりこちらが後位であることがわかります。

・クロ681量産車の連結側。
(f26) 681
 念のため、前位側のエンド表記です。

 上記は通常の営業運転の本線上での話で、特に回送で大阪駅北方貨物線が絡むと、回送経路上や車輌基地内や臨時列車の運行中で向きが逆になっている場合があります。

 そういや、おおさか東線の開業で通常の営業路線にリバースが発生したけど、どういう扱いになっているのやら・・・。

〇 〇 〇

 特殊な例としては285系の下り方先頭車であるクハネ285の偶数番号車( TNWC' )があります。鉄道ファン1998年6月号を見ると上り方先頭車である奇数番号車( TNWC )と車体も床下機器の配置もまったく同じです。ジャンパ連結器が運転室の反対側車端で両渡りとなっているので、制御引き通しの位置も TNWC と同じと思われます。

 ところが TNWC が運転室側に 1位 2位 の表記があるのに対して、 TNWC' は運転室側には 1位 2位 の表記がありません。つまり他の車輌と同じで TNWC' も東京寄りが前位となる「奇数向き使用」となっています。ただしそうすると制御引き通しの位置が1−3位側に当たることになるので TNWC' だけが「偶数設計」ということなります。

図F3.せっかく「向き」をそろえながら「設計」がそろっていない285系の編成
JR西日本 285系の向き

 所要の輌数から考えて、両方の先頭車を別形式にしたり別番台にしたりして区分する必要は無いということなのでしょうが、それならば図D2と同じようにすればよいのに、前位・後位については図F1と同様にしたため、JR西日本が開発した系列の電車では唯一の「偶数設計・奇数向き使用の珍車」が誕生することになったようです。運転室が後位にあることを併せると国鉄を通しても空前の珍車?絶後になる可能性も高そう。それにしても、またもや「設計」と「向き」に絡む混乱の歴史を繰り返す・・・?

〇 〇 〇

 クロ212はJR西日本独自の形式ですが、国鉄型の系列に含まれることにされているためか運転室側に 1位 2位 の表記がある偶数設計・偶数向き使用で新製されました。そのうちクロ212−1はクヤ212−1に改造されたときにエンドを逆転してU@techの他車と同じ奇数設計・奇数向き使用にそろえられたようで、運転室と反対側に 1位 2位 の表記があります。

図F4.クロ212からクヤ212への変化
JR西日本 クヤ212の向き

・クロ212のときは前位側だった、クヤ212の後位側。
(f31) utech

・クロ212のときは後位側だった、クヤ212の前位側。
(f32) utech

 先頭車改造されてエンドを逆転されている(JR西日本の基準ではする必要が無い?)車輌もある中、元から先頭車なのに、前位・後位をわざわざ逆転しているのが不思議な気がします。

〇 〇 〇

※両運のクモハ125は少なくとも加古川線用は東京寄りが前位の奇数向き使用になっています。ジャンパ連結器は2位側と4位側にありますが、引き通しの位置を確認できていません。ただ、わざわざ偶数設計にする必要もないでしょうから、「143系列の両運車」と同じく奇数設計・奇数向き使用で間違いなさそうです。

※貨物も含めて他のJRの在来線の電車は、雑誌掲載の写真を見る限りは運転室側が前位となっています。(JR四国5000系・JR東海285系3000番台を除く。どちらもJR西日本に絡んでいます。)

※「設計」に関してはJR九州のMM' ユニット方式の電車が変わっていたようです。雑誌掲載写真からの推測を元に「設計」と「向き」を図にするとこのようになります。

図F5.787系と811系の「設計」と「向き」
JR九州 設計と向き

 制御電動車は
・奇数形式番号が「偶数設計・偶数向き使用」
・偶数形式番号が「奇数設計・奇数向き使用」
と、見事に逆転しています。

※JR貨物のM250系スーパーレールカーゴは、RailMagazine2004年8月号掲載の機器配置図からは全形式で1−3位側に制御引き通しがあるようで、中間車も含めて全車輌が偶数設計となっているようです。

G.雑誌記事等の現況

 既述の通り新幹線では最初から運転室と前位を関連させないようにしています。

 私鉄に目を向ければ、見つけられた中では営団/東京メトロも同様の決め方をしています(参照:kikakupege.mitarashidango.com/metro_position.html)。

 雑誌の写真で見る限りは近鉄の全ての電車は運転室とは無関係に大阪線上で難波寄りを 1エンド 、伊勢中川寄りを 2エンド としているようです。

 ほかの私鉄でも同じような扱いをしているところはたくさんあるでしょう。私鉄も含めて考えれば、JR西日本の電車で前位の方向がそろっていることは珍しいことでもありません。

 記事中で正しく前位・後位を記述されている執筆者もみられます。しかしちょっと雑誌を見ただけでも、鉄道ファンの521系の記事ではクハ520のパンタ搭載位置を「後位側」と記述していたり、鉄道ジャーナルやRailMagazineでは225系に至っても便所の設置位置を「後位側」と記述していたりしています。しかも記事中に便所部分の車体側面に 2位 が付いていることがはっきりとわかってしまう写真を載せていたりもします。既述ですが、運転室側が前位という思い込みから逃れられない執筆者は相当多いのでしょう。

 こちらも大きく書いておきます。

JR西日本の電車の先頭車は運転室側が前位とは限りません。

 JR西日本がアーバンネットワークの路線愛称を大阪駅を中心に制定したときの鉄道ジャーナルの論調を思い返せば、JR西日本が規程を変更したことに対する何らかの「意趣」が表れているのではないかとすら・・・。杞憂なら良いのですが・・・。

 前出の新幹線に偶数向き使用車があるかのような記述も含め、こういう「前位・後位」の誤りも問題ですが、雑誌記事では

・偶数設計・奇数設計
・偶数向き使用・奇数向き使用
・編成端の偶数方・奇数方
・形式番号の偶数・奇数
・番台区分の百位・千位の数字の偶数・奇数
・車輌番号の偶数・奇数
・連結位置の号車の偶数・奇数

のうちのどれの意味で偶数・奇数と言っているのかさっぱりわからない、たとえば片方の先頭車やMM' ユニットの片方の形式を指して「偶数形式」と呼びながら、単に見たまんま形式数字が偶数であるだけなのか、それ以上の「設計」や「向き」の意味があるのかどうか(中間車で意味があればやっぱり驚天動地・・・)が判然としない記述が散見されます。

 よく国鉄時代の車輌の記事を書いている手伏字伏字之氏の記事中でも混乱が見受けられます。 尤も同氏には独特の文体のほうを先に何とかしてもらいたいものですが・・・。

 とはいえ、厳密に書こうとすると
「285系クハネ285型は、奇数車号は奇数設計で奇数方編成端、偶数車号は偶数設計で偶数方編成端に連結される先頭車で、奇数形式番号で奇数向き使用であり、番台区分・編成中の号車は偶奇に無関係」
というような記述がおのおのの形式(場合によってはおのおのの車号)について必要になってしまうわけで、それはそれで考えものかもしれません。



 これさえ見れば誰でも誤解することなく「前位・後位」「偶数・奇数」「偶/奇数設計」「偶/奇数向き使用」の意味と相互の関連と時期による変化について理解できるような記事(可能ならば私鉄や外国の鉄道の向きの考え方や方式と比較できるような)が望まれます。



 それにしてもとことん突き詰めていえば「ただエンド表示が逆についているかどうか」だけでしかないわけで、こんなことにも悩まなければならないテツとは因果というか、こんなことを悩んでいられるテツは幸せというか・・・。

おしまい車止標識

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